2020年8月の記事一覧

コロナ禍における子どもたちの声

今、頑張っている子どもの気持ち 聴いていますか?

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特定非営利活動法人子ども劇場千葉県センター

チャイルドライン千葉 担当理事 中村 幸恵

  

新型コロナ感染拡大の中で、2月末より春休みも含め約3か月間の休校となり、子どもたちの日常生活は一変しました。ステイホーム、ソーシャルディスタンス、テレワーク、オンライン授業等などの言葉や行動様式も生活の一部になってきた感があります。

 チャイルドラインは1 8歳までの子どもが話せる子ども専用電話です。安心して話してもらうために

①ヒミツは守るよ

②名前は言わなくていい

③どんなことも一緒に考える

④切りたいときには電話を切っていい

 という子どもとの4つの約束があります。かけてきた子どもの心に寄り添い、その気持ちを受け止めながら共感的に聴くことを大切にしています。フリーダイヤルでかけられ、2018年からはオンラインチャットも開設しました。現在、全国68団体が連携しあい、約2000名のボランティアが話を聴く活動に参加しています。子どもたちは、いじめや友人関係、部活、勉強、進路、生き方、家族との関係、恋愛、SNS上のことなど普段の生活の中で感じた寂しさ、辛さ、悲しみ、怒り、そして楽しかったことなどをチャイルドラインで話してくれます。

 

チャイルドラインではこのコロナ禍のなかで過ごした全国の子どもの状況を「「新型コロナウイルス感染症」に関連した子どもの声」(事例とデータ速報)(2020年2月28日~4月30日まで)」としてまとめました(末尾参照*1)。一部抜粋して紹介します。事例は個人が特定できないよう編集しています。

 

◎休校要請から全国緊急事態宣言までの主な傾向

Ⅰ 《休校要請 2月28日~ 》

*休みになって将来のことを考えてしまう 

*受験前に休校になって不安になる時間が増えた

*友だちと会えなくなってしまった 

*急に卒業式で実感がわかない 

*アルバイトを休むように学校から言われている

 

Ⅱ 《休校解除方針 3月20日~ 》

*時間がたくさんあるけど何をやっていいのかわからない 

*修了式で久しぶりに学校に行ったけれど、友だちとはあまり話せなかった 

*志村けんが死んでしまった。ショック

*テレビで一日中コロナのことばかりやっている 

*進学したが、うまくやっていけるか不安

 

Ⅲ 《7都道府県緊急事態宣言 4月7日~ 》

*地域に感染者が出た 

*新学期が始まったけど学校がいつ始まるかわからないし、友だちができるか不安 

*自分は休みだけど母が仕事に出かけるので感染しないか不安 

*毎日コロナで人が死んでいて、怖くて外にでられない 

*生活のリズムが崩れてきた。ゲームばっかりしちゃう

 

Ⅳ 《全国緊急事態宣言 4月16日~ 》

*部活で大会を目指して頑張ってきたのに、なくなってしまってすごく落ち込んでいる

*また学校が休みになって外に出られなくなった。友だちができない 

*早く普通の生活に戻ってほしい。いつまでつづくのか 

*友だちと遊べないし、話せない 

*外出できないから考えることが増えた。不安で色々考えてしまう

 

Ⅴ 《その他》

〔家庭が安心ではない状況〕や〔自分自身についての不安、向き合うことによる発見など〕の内容

*親もコロナのことでイライラしてうざい 

*親がコロナのせいで仕事や生活のことを愚痴る

*親が仕事が休みで収入が減ってケンカしている 

*コロナでみんな我慢しているのに自分だけ何もせず、いいのかな? 

*暇だったから今まで見えてなかったものが見えた。お母さんの家事の大変さとか 

*突然の休校で目標を失ってしまった。勉強が手につかない。将来が不安になる

*コロナのことが不安で何もできない。なんで自分は生きているのかと思う

 

 

全体的に学校や部活に関する内容が減少し、自分自身に関する内容が増加したのが特徴です。また、この速報データからは、報道等で注目されている家庭内の虐待や貧困、自殺に関する内容について、特段、大きな変化は見られませんでした。以上、4月30日までの子どもの声と傾向になります。

 

5月後半から、「学校に行きたくない」「入学式に行っただけでクラスメイトと初めて会う」「話しかけられるか心配」「クラス替えになるので友だちができるかな」「オンライン授業では録画して何度も見直せたけど授業になるとついていけるだろうか」等、学校生活への不安を話す子どもが増えました。また、「教室では机が互い違い」「先生はすぐ離れなさいと言い友だちと近づいて話せない」と戸惑いの声もありました。

学校は再開しましたが、子どもたちはまだまだコロナ禍の中にいます。引き続き、その後の子どもの声を伝えていく予定です。発表の場をいただき、ありがとうございました。

 

 

(参照*1)特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター「新型コロナウイルス感染症」に関連した子どもの声」(事例とデータ速報)、(https://childline.or.jp/ プレスリリ―ス:2020年5月26日、一般公表:5月27日)

 

コロナ資料

 


 

中村幸恵

 

中村 幸恵(なかむら ゆきえ)

2020年2月より、チャイルドライン支援センター理事。子ども劇場千葉県センターのチャイルドライン千葉担当理事として日々の運営やボランティア育成、社会発信活動に携わっている。

 

with コロナ時代に向けたチャレンジ 世田谷区立希望丘青少年交流センター(アップス)より

  

世田谷区立希望丘青少年交流センター長 下村 一

 

今の時代に必要なユースワークのため、できることを一歩ずつ

|オンライン|つながり|ユースワーク|

 

 

家にも学校にもないものを。

 世田谷区立希望丘青少年交流センター、愛称「アップス」は、世田谷区で3館目となる青少年交流センターとして、2019年2月1日に開館しました。最大の特徴としては構想段階から若者の声を反映してきたことで、「あり方検討委員会」「運営準備委員会」などを経て、開館後も若者が「運営委員会」のメンバーとして運営に参画しています。「家にも学校にもないものを。」という施設のキャッチコピーは若者が決めたものです。

主な対象は、中高生から20代の若者ですが、生きづらさを抱えた若者の支援として、39歳までを対象とした就労支援事業なども実施しています。

コロナ禍の状況としては、若者の居場所を確保するため、感染予防対策をしながら3月末まで通常通り運営してきましたが、4月1日から6月8日まで臨時休館となりました。

 

 多目的スペース

(写真)アップスの多目的スペース。感染予防対策としてソーシャルディスタンスがとれるように机やマットを配置。

 

若者とつながりを継続させるために

 休館が決まり、最も憂いたことは、毎日のようにアップスを訪れていた若者や、家に居場所のない若者がどこで、どのように過ごすのだろうかということでした。若者とのつながりを保つために、できることから少しずつ活動をしていきました。

 最初に取り組んだのは、アップスの近隣公園の巡回です。臨時休館の翌日から1日2~3回、時間を決めて公園の見回りをスタートしました。密にならないように注意しましたが、家に居場所がない、食事の心配をしなくてはならないなど、配慮が必要な若者と出会うと、少しホッとするとともに新たな不安が生じ、無力感を覚えることもありました。

 

 アップスでは、もともと若者への情報発信としてTwitterを活用していましたが、ユースワーカーの肉声を伝えたいと動画配信をスタートしました。当初は施設を消毒している様子に併せて応援メッセージなどを配信しましたが、臨時休館が長くなるにつれ、家でもチャレンジできる遊びの紹介や、若者の気分転換になるようなオモシロ動画などに変えていきました。

 4月14日からは「ユースワーカーと電話で話そう」と題して、直接若者の声を聴くことにトライしました。若者が電話をしてくるのかと不安でしたが、実際には1日数件ですが、連日電話がありました。会話の内容はたわいもないものでしたが、何かあれば電話できるという状況をつくれたことは良かったと思っています。

 5月11日からは、Zoomを使った「アップスオンライン」をスタート。毎日18~19時に実施。1日1~6人程度でしたが、お互いに顔を見ながらワイワイとおしゃべりを楽しみました。特にテーマも設けずにおしゃべりをしたこともありましたが、オンラインで初めてつながった若者もいたため、アイスブレイクとして簡単なレクをしながら、レクとレクの合間におしゃべりをするというスタイルで行いました。

  名刺型チラシ

公園巡回や中学校に全生徒配布をお願いした名刺型チラシ

 

 

 

 

 

 

 

つながりを力に

 アップスとしては、上記のような取り組みをしてきましたが、自分たちだけの力では、支援が必要な若者に支援を届けることができないのではないかと考え、さまざまな社会資源とつながることに活路を見出しました。

 4月18日からは「世田谷NPO地域連携会議〜コロナウィルス緊急対策会議〜」に参加。「区民版子ども・子育て会議」などでつながっていた子育て支援、貧困対策、障がい児、老人福祉、ボランティア関連などの団体メンバーと週2回、オンラインで情報共有を行いました。それぞれの分野特有の情報を得ることができ、ここから新たな取り組みも生まれました。アップスとしては、生活困窮の若者をフードパントリーにつなぐことができたり、またフードパントリーを通じて若者への情報発信ができたりと実質的な支援にもつながりました。

 また、子どもや若者に特化した情報共有の必要性を感じ、コロナ以前から実施していた児童館有志による学習会、児童館+(プラス)のプログラムの一つとしてオンライン・ミーティングを実施しました。児童館、プレーパーク、BOP、学校などの関係者などが参加し、情報共有するとともに、現在のような危機的な状況下での子どもたちの遊びや行動などについて学びの機会を設けました。

 

児童館+

Zoomで実施した子ども関連の情報交換「児童館+」

 

 区外の様子をしっかりと把握することも必要と考え、児童館のネットワークを通じて文京区青少年プラザb-lab、石巻市子どもセンターらいつ、野毛青少年交流センターとともに、「オンライン他施設合同研修」を実施。職員研修の形をとって、コロナ禍での各施設が若者とのつながりを保つためにどのような取り組みをしてきたか情報共有しました。また、調布市青少年ステーションCAPS、尼崎市立ユース交流センターを仲間に加え、オンラインプログラムの情報交換、再開するにあたっての準備などについて検討しました。

 これらのネットワークを通じた取り組みは、アップスにとっても、1人1人のスタッフにとっても貴重な情報資源となり、何か不安な気持ちを和らげ、物事をポジティブに考える活力源にもなりました。

 

施設再開後の新たなチャレンジ

 6月9日から感染予防対策をしっかりととった上で施設を再開させ、少しずつではありますが日常が戻りつつあります。利用ルールも少しずつ緩和し、現在では制限はありますが地域体育館でのスポーツプログラム、音楽スタジオの利用などもできるようになってきました。ただし、コロナ以前の日常に戻すことは困難であり、この臨時休館の間に培ったオンラインのノウハウなども生かして、今後のユースワークをしていきたいと考えています。

 6月21日にはネットワークとオンラインのノウハウを生かして、文京区と石巻市と距離を超えて若者同士の交流も始まりました。また、フランスの中高生との交流もスタートさせる予定です。若者がつながりを生かしてどんな活動を生み出していくのか、見守っていきたいと考えています。

 

作戦カイギ

若者同士の交流を図った「作戦カイギ」

 

 

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下村 一下村 一(しもむら はじめ)

世田谷区立希望丘青少年交流センターのセンター長。大学卒業後、公益財団法人児童育成協会に入職。国立総合児童センター[こどもの城]、草加市立氷川児童センターを経て現職。NPO法人プレーパークむさしの、NPO法人たねの会の理事。