ブック&シネマレビュー

映画『存在のない子供たち』

 

意を決した意見表明は、両親の告訴だった。

 

 

 

 「どんな罪で両親を訴えるのか」裁判長の問いに「僕を産んだ罪で」と答える主人公の少年ゼイン。出生届も出されないため戸籍もなく、誕生日もわからない。難民の両親と妹たちと共に貧民街に住むゼインは、学校にも行けず、両親に不法な仕事を手伝わされる日々。たった11歳で身売りするように嫁がせられる妹も救えなかったことに絶望し、ゼインは家を出る。生きる権利も、育つ権利も、守られる権利も、子どもの権利など何ひとつ保障されない生活が続いている少年だった。その少年が、ついに「意見表明権」を行使した。それは、冒頭の裁判所のシーンにある、両親を法的に訴えることだった。

 物語の終盤、刑務所に入れられてしまったゼインは、視聴者が電話で悩みを打ち明けるテレビ番組に獄中から電話する。 

 

 「人から尊敬される人間になりたかった。でも、神様はボロ雑巾でいることを望んだ。僕は地獄のなかを生きている」。 

 

 生まれた環境で生きることしかできない子ども。瞳の奥の闇は、もっと人間らしく生きたいと叫んでいるように見える。主人公はじめキャストのほとんどに、役柄と似た境遇の素人を集めたのは、レバノンで生まれ育ったナディーン・ラバキー監督。ドキュメンタリーではないが、ドキュメンタリーを越えたリアルな子どもの声を感じ取れる映画だ。 

(フリーランス編集&ライター 北方美穂)

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タイトル 存在のない子供たち

監督・脚本・出演 ナディーン・ラバキ―

 Blu-ray:5,280円(税込)

DVD:4,290円(税込)

発売元:キノフィルムズ/木下グループ

販売元:ハピネット・メディアマーケティング

リンクURL : http://sonzai-movie.jp/

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